怪談をすると本当に霊が寄ってくるのか
芸能関係の仕事をしている友達Aから聞いた話
Aは、今はまだテレビには出ておりませんが、学園祭や地方のお祭りでネタを見せる、
いわゆる地方営業で生計を立てております。
数年前、新潟のとある町の企業主催のお祭りでネタを見せるという仕事の依頼を受けたそうです。
燕三条駅、新潟県長岡市の先にあるこの駅に、Aが着いた時には15時をまわっていた。
Aはタクシーに乗り行き先を運転手に告げ長旅の疲れもあってか、Aはそのままうとうとと眠りについていた。
先方の担当者からは「最寄りの駅からは4~50分はかかりますよ」と聞いていたが、
ひと眠りしていたため、思っていたよりも早く目的地についた。
ここは、地元で有名なメーカーの工場で、
今日はこの工場の運動場で、企業の従業員と地元民のためにお祭りが開かれる。
そのお祭りを盛り上げるために、お笑いのネタをやってもらいたいとAが呼ばれたのである。
早速工場側の担当の方、Bさんがお出迎えに来てくれる。
Bさん「長いところご苦労様です。おまちしておりました。」
A「今日は呼んでいただいてありがとうございます。のどかでいいところですねー」
Bさん「いやいや、ただ何にもないだけですよー」
そんな他愛のない会話をしてから、Bさんが、
「お疲れでしょうから、時間まで楽屋でお休みになっていてください。
まぁ楽屋といっても工場長の部屋なんですけどね。」
A「お気遣いいただいてありがとうございます。部屋を用意ただけているだけでありがたいです。」
Bさん「工場長の部屋はこの工場で一番古い建屋の中にございます。こちらへどうぞ。」
Bさんの案内についていくA。
お祭りで人が集まっているとはいっても、それは外の運動場の話で、
工場の中に一歩でも入ると一人も人がいないガランとした景色が広がっていた。
Aはそんなガランとした景色に少し気持ち悪さを感じながら、Bさんについてく。
Bさん「こちらです。」
一番古いという建屋の一番奥の部屋であった。
中に入ると、工場長の部屋だけあって広くきれいにされていた。
Aは中に入った途端少し気が緩んだのか、トイレに行きたくなった。
A「Bさんついて早々申し訳ないが、トイレに案内してもらえないですか?」
Bさん「いいですよ。トイレならこちらですよ。」
再びBさんの後ろについていく。
AはしばらくBさんについて行きパッと左の方を見る。
すると『WC』と書かれた看板があった。
明らかにトイレだが、Bさんはそちらの方に行こうとしない。
A「Bさん!あれってトイレじゃないの?」
Bさん「トイレですけど、向こうにもう少し新しいトイレがありますよ。」
A「早く行きたいから使えるのであれば、こっちでいいよ。」
Bさん「使えるとは思いますが・・・じゃそちらに行きましょう。」
AとBさんは古い方のトイレに向かい歩いていく。
Bさん「じゃぁ私は外で待っておりますね。」
Aはトイレの中に入る。
トイレの中は入り口から奥の方に長く伸びている長方形で、
入ってすぐ右側に掃除道具入れが置いてあるり、
その奥に小便器が4つほど並んである。
入って左側には洗面台があり奥に個室が2つ並んでいる作りになっていた。
見た感じ、床のタイルにはうっすらとほこりが積もっていて
長年使われていない感じがした。
少し気味の悪い雰囲気だったので、早くすませて帰ろうと思い
一番手前の小便器で用を足すことにした。
用を足していると、奥の小便器の方、視界の端っこに男が立っているのが分かった。
Aは『ヤバイ、見ちゃだめだ。』一瞬で判断して反対の方を向きながら、
洗面台の方に歩いて行った。
もしかしたら、見間違いだったのかもしれないと思い、
一度小便器側を振り返ると、誰もいない。
『よかった、やっぱり見間違いだったか』そう思い安心して、洗面台の鏡を見ると、
さっきの男が小便器のところに立っている。
しかも、こちらに指をさしながら、こちらに向かってきている。
Aは焦り急いで手を洗い、外へと飛び出す。
Bさん「Aさんどうかしましたか?」
A「俺意外に入ってきた人はいないよね?」
Bさん「いないですよ。どうかしましたか?」
A「中に人がいる。」
Bさん「ちょっとやめてくださいよーいるわけないじゃないですか。」
A「Bさんちょっと中見てきてくれないか。」
半ば強引にBさんをトイレに押し込め確認させたが、Bさんは何もいなかったという。
Aは「そんなはずはない!鏡だ!鏡越しに見てくれ!!」とBさんに頼んだ。
Bさんはトイレの中に入り、しばらくしてから慌ててトイレから出てきた。
Bさん「Aさん!このトイレ鏡ないですよ!!」
Aは慌ててトイレの中に入り確認すると、
確かに鏡があった痕跡はあるが、そこに鏡はなかった。
以上、友人から聞いた不思議な体験でした。